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子育て世代の生の声 ~みんなどうしてる?~

育児、介護をしながらの、日々の研究活動のシーンでは、いろいろな悩みが生じると思われます。
ここでは、男女共同参画推進センターが提供する情報、部局によるサポートなど、京都大学における現状と事例を共有します。是非みなさまのご意見をお寄せ下さい。

子どもが体調不良の時

ニュースレター第95号掲載(2021年3月15日)

子どもはすぐに風邪をひきます。特に、母体免疫の効力が低下するおおよそ生後6か月以降、また、保育園等、集団生活の場に子どもを預けたばかりの頃などは、「熱がありますのでお迎えをお願いします」という連絡を職場で受けることが多いかもしれません。筆者の体験も交えながら子どもが体調を崩した時の対応を紹介したいと思います。

子どもの体調不良は突然です。出勤しようと思った朝、いつものように体温を測ると37.8°C、登園できない(注1)、でも今日は休めない仕事が入っている...ということは、よくあります。筆者は、そのような時、京都大学病児保育室「こもも」を利用しています(注2)。投薬や経過観察なども含め、看護師、保育士が、病児の保育を行っています。また、京都大学附属病院の小児科と兼任で、専属の小児科医の先生もいます。「こもも」以外にも、京都市には、民間の施設も含め、複数の病児保育室が開設されています(注3)。「こもも」などでは事前登録が必要で、またどの病児保育室でも風邪の流行期で満室の場合や利用できない疾患があるため、入室基準を事前に確認しておくことや、複数の病児保育室の利用可能性を検討しておくこと、必要な書類を職場や自宅に準備しておくことが大切です。多くの保護者は、日頃、朝早くから夜遅くまで子どもを保育園に預けているため、せめて子どもが体調不良の時には、子どもの傍にいてあげたい、と思うのではないかと想像されます。時間の融通が利きやすい業務に従事している場合には、このようなジレンマが一層大きくなるかもしれません。筆者もそうでした。しかし、あるとき子どもが「こもも」の魅力的なおもちゃで遊びたいために、「おねつがあるの...」とウソをついてまで行きたがったことがあり、それからは、気にせずに利用しています。少し割高にはなりますが、病児ベビーシッターを利用した体験談も周りにはあり、子どもを不慣れな場所に預けることに抵抗を感じる方の選択肢になるかもしれません。ベビーシッター育児支援割引券をうまく活用するとよいでしょう(注4)。

病児保育室や病児ベビーシッターを利用するにしろ、しないにしろ、子どもが体調不良の時は、保護者は大変です。仕事を中断し、外来受付終了間際に、子どもと小児科に駆け込むこともあれば、(場合によっては夜中の)嘔吐や下痢の始末、機嫌の悪い子どもの相手、時には、夜間に救急外来を訪れることもあります。子どもが複数いる場合は、子ども間で感染が広がり、看護期間がさらに延びることもあります。仕事を休めば、その間に業務が溜まり、看護で消耗しているところ、休み明けの業務によって、さらに体力気力が失われることもあります。筆者の場合、そのような時には、無理をせず、平常心でいることを心がけています。イライラしそうであれば、深呼吸を、疲れたら睡眠を、家事の手抜きもしています。1歳の娘が発熱した時、ほぼ空っぽの冷蔵庫を前にして、娘には瓶詰の離乳食を、4歳の息子には、白ごはんの上に娘の離乳食と麺つゆをかけて、「まぁ、いいか」と出したこともありました。
筆者は、研究と教育を主たる業務としていますが、研究に割く時間が、どうしても削られてしまいがちです。特に、子どもが小さいうちは、すぐに体調を崩すため、一層そのように感じることが多いのかもしれません。一方で、業績を思うように上げられないことを子どものせいにしていないか、という葛藤もあります。また、子どもがいる人は、すぐに休んで困るな、と職場で思われていないか、という不安もあります。筆者自身、子どもがおらず、会社員として勤務していた頃、育児中の同僚の業務を何度か代行した経験があり、「またか、困るな」と感じたことが少なからずあります。今となっては、同僚の状況をよく理解できていなかったことを反省しています。多くの場合、子どもは成長とともに丈夫になります。筆者も、一時的なこと、と割り切って、焦らず過ごすことを心に留め、自分に100点をあげられないこの状況や子育て自体を楽しむ気持ちでいようと心がけています。

以前であれば、祖父母等にサポートをしてもらえていた家庭も、現在のコロナ禍では、そういったサポートを受けることも難しくなっています。2021年2月現在、「こもも」も閉室になっています(注5)。保育園では、登園基準が厳しくなり、発熱等がなくても利用できない場合も少なくないと聞かれます。筆者も、コロナ禍により、子どもの体調不良で仕事を休む回数や日数は増えていますが、保護者間の協力と、職場の理解とオンライン業務の浸透によって乗り切れることも増えました。咳をしながら折り紙をする子どもの横で、マスクをしてメールを確認し、職場とは、ZOOMや電話で打ち合わせ、長時間のオンライン会議時には、子どもが初めて目にするお菓子とアニメに助けてもらい、配偶者が帰宅してからは、一切をまかせて、その間、日中にできなかった仕事をこなします。

コロナ禍が社会にもたらした課題は莫大にあり、子育てのしにくさは、その一部にすぎないかもしれません。しかし、社会全体で子どもを育む動きを後退させることなく、これまでとは別の形によるサポートの仕組みが発展していくことを切に願います。

(文責 育児・介護支援事業 WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)

1 通常の保育園では、熱が37.5度以上あると登園できず、登園中の検温で37.5 度が計測されると保護者にお迎えにくるように要請されます。

2 京都大学には、教職員・学生の子どもが、病中・病後のため幼稚園・保育園・学校へ登園・登校できない時、親が仕事や研究を休むことなく、子どもの保育ができる環境を提供する施設「こもも」があります。
 http://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/care/sick/

3 京都市病児・病後児保育実施施設一覧
 https://www.city.kyoto.lg.jp/hagukumi/page/0000098237.html

4 本コラムでも既に取り上げたことのある「ベビーシッター育児支援割引券」については、以下をご参照ください。
 http://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/care/babysitter/

5 令和度3年度4月から「こもも」は、病中は利用できませんが、病後児保育が再開される予定です。