キャリアストーリーを知るOG社会人インタビュー

ものの見方が広がっていく面白さを追い求めること。
私の関心は人文・社会科学の思考から。

橘 菫 TACHIBANA SUMIRE

教育学部 教育科学科 卒業
大学院教育学研究科 修士課程 修了
三重県 県立伊勢高等学校 出身
株式会社ハウテレビジョン

「たまたま」環境に恵まれ京大へ
地元の公立高校に入学した当初の私は、「大学進学率」という言葉も知らないほど、勉強にも進学にも興味が薄かったように思います。しかし、たまたま学ぶことの面白さを教えてくれる先生方と出会い、一気に「勉強が楽しい」と思えるようになりました。部活動も好きでしたが、「一日で一番楽しいのは授業の時間」というくらい、わくわく授業を受け、放課後も先生を質問攻めにしていたことを覚えています。
中でも、お気に入りは現代文の授業。素材となっていた人文・社会科学の思想を通して、思考の幅を一気に広げられるように感じました。担当の先生が京大の教育学部出身だったことから、「こうした考え方ができる人になりたい」と思ったのが、京大に興味を持ったきっかけです。しかし、入試難易度からなかなか決断できず、心を決めたのはセンター試験を終えてから。先生方や友達に助けてもらいながら慌てて二次試験の勉強をし、周囲に助けられて進学できたので、幸運だったと思っています。

ゼミ仲間、先生とディズニーランドへ

自分を形作る基盤が形成された大学生活は“ 青春そのもの”
18歳まで過ごした大好きな故郷・伊勢市は、のどかで素敵な街でしたが、遊びも勉強も都市部ほど選択肢が多くありませんでした。ゆえに良くも悪くも「選択で迷う」経験が少なかったように思います。それが、京大に来て初めて様々な方面で「何かを選ぶ=何かを捨てる」必要性に直面し、「自由を謳歌する」難しさを痛感したのです。例えば、当時500科目くらいあった一般教養。入学当初、時間割を作るにあたって「何をどう選んだらいいんだろう」と悩みました。しかし慣れてくると、全てを自分で選択できることがとても心地よく、社会人になった今も、こうした自由を追い求めて飛び歩いているように思います。また、入学前は「変人が多い」という噂を聞いていましたが、入ってみると「普通である」「変である」ということに頓着することが少ない、「みんな違ってみんないい」のが当たり前とされる世界でした。京大で数年過ごすと誰もが、“そのままの自分”になっていく。日本全体もこういう社会になるといいなと思います。
学部時代の生活を振り返ると、早朝から深夜まで、部活動(フィギュアスケート部)の練習をしたり、春は桜、夏は蛍、秋は紅葉と花鳥風月を追って京都中を巡ったり、友達とあらゆることを議題に議論したり…。たくさん感性的な刺激を受け、笑ったり泣いたり、忙しい日々でした。
一方大学院では、高校時代からの関心を追求し、教育・歴史社会学を専攻。それなりに本を読み勉強したつもりでしたが、周りの学徒たちに全く追いつかず、いつも背伸びしていました。でも、そういった「自分には到底かなわない」という人たちに、常にものの見方をひっくり返されるような経験は刺激的で、日々楽しく議論をしていました。また、英国・オックスフォード大学に3週間短期留学をし、多様な専攻の研究者の卵たちと切磋琢磨したのは夢のような経験でした。ありがたいことに「今年が人生で一番楽しくて充実している」と毎年感じていて、振り返ると青春そのものの大学生活でした。

京都大学での学びと文化を礎石に、「好きなこと」を仕事にする
新聞社、外資系コンサルティング会社を経て、今は学生や若手社会人のキャリアを支援する「外資就活ドットコム」「Liiga」というメディアを運営する会社で、コンテンツ戦略の立案や、記事の執筆・編集、組織作りなどをしています。知人の紹介で転職した今の会社は、自分のキャリア選択の軸にぴったり合っていることに加え、各界の一流の人たちと取材できる環境、「視野を広げる楽しさ」を学生に伝えられる事業などに魅力を感じています。
私のキャリア選択の軸は2つ。一つは「人間の心や営み・社会を深く理解できる仕事をする(=広い意味で“教育”に関わる)こと」で、京大教育学部での学びが基盤となっています。もう一つは、新聞社での経験に根差し「メディアの組織作りに関わること」です。
京都大学という文化を礎石としてビジネスに関わっていけることは、自分の強みだと思っています。当時の指導教官からは「本当に好きなことを研究するように。好きなことをして失敗しても自分の選択だから受け入れられる。」と言われていましたが、京大にはそういう空気感がありました。社会人になりたての頃は無我夢中でしたが、そろそろ慣れてきたことから、仕事の中でも当時のように「自信をもって好きなことをする」という意識を取り戻しつつあります。
今後の将来像としては、引き続き本業で2つの軸に関わっていきたいです。また、人のキャリア相談を受けたり、家庭教師を依頼されたりすることが多いので、個人としてはそうした活動を続けていきたいという思いもあります。将来的には大学・アカデミアの世界にもなんらか貢献したいですね。

記者時代に担当した特集記事

上司・同僚からの一言

池内 淳志さん
執行役員 COO

橘さんは入社から1年程度ではありますが、すでに部門の中核的な役割を担っており、いつもほんとうに助けられています。向上心が高く、編集者としてのレベルを高めるべく日々努力しているのに加え、部門の課題に対しても真摯に向き合っており、部門の成長に大きく貢献しています。
橘さんとは、いつも本質的な議論ができるため、とても頼りにしています。会社が大きく成長をしていくにあたって、さらに大きな役割を担ってほしいと思っており、さらなる成長に期待をしています。

意外と規則正しい生活を送ってます!

大学院時代の私は日が落ちる頃に起きて、19時に研究室に行く夜型生活。幸い指導教官や、ドクターの先輩も同じ時間帯に活動する人たちだったため、煮詰まってきた深夜2時ごろに先生を訪ねて助言を求めたり、先輩に相談しているうちに夜が明け、力尽きてソファに寝てしまったり…。先生には「一生あなたは日の光の下で働けないわよ」なんて言われましたが、今はなんとか太陽のもとで働いています。

こうやって勉強してました

高校の先生に「東大でも京大でも、学校のカリキュラムを逸脱したものは出ない。学校の勉強をきちんとしたら受かる」と言われたことを信じて、ひたすら学校の定期テストで100点を取ることに専念していました。ただ、京大の入試問題は本質をついた面白い問題だと感じていたので、3年生の夏ごろからは、京大過去問に近い問題を解いたり、京大模試を受けたりしていました。結果論ですが、前者はセンター、後者は二次試験と手堅く対策できたと思います。


自分の心に正直に、好きだという気持ちや学びたいと思う気持ちを大切に、道を選んでください。好きなことのためなら頑張れますし、たとえうまくいかなくても良き経験になると思います。少しでも京大に興味がある方へ。多感な学生時代を京都大学という空間で過ごせたことは、私にとって大きな財産でした。多方面に尖った優れた先生方、学問を尊重する大学、学生が主役の左京区界隈の浮世離れした空気感、京都という街にあふれる歴史、文化、自然…。これらに魅力を感じるなら、ぜひ挑戦してみてください。また「京大に行きたいけれど、自分には難しい」と思っている方。どうかあきらめず、リサーチし、勉強し、仲間やサポートの機会を探し出してほしいと思います。自分の思いを大切に、正しく努力を重ねれば、道は開けると信じています。