キャリアストーリーを知るOG社会人インタビュー

様々な選択肢の中から選んだ研究者への道
基礎研究を社会貢献へつなぐ

奥村 優子 OKUMURA Yuko

大学院 文学研究科博士後期課程 修了 博士(文学)
文学部 行動・環境文化学系 心理学専修 卒業
徳島県 徳島文理高等学校 出身
NTTコミュニケーション科学基礎研究所 協創情報研究部

数学好きで国語が苦手な私は絶対理系!
阿波おどりで知られる徳島市で生まれ育ち、小学生の頃から陸上少女でした。中学や高校でも陸上競技部に所属して、ハードルを専門に毎日部活に打ち込んでいましたね。部活の先輩には、勉強も部活も両立できている優秀な人が多く、自分も頑張らねばという意識は強かったです。
高校では京大・東大や医学部を目指すクラスにいたので、授業の難易度も高く、先生方も大学入試を意識した授業をしてくださっていたと思います。得意科目に関して言うと、私は幼い頃から数学が好きでした。解答を導き出すこと、明快な答えが出ることが面白いと感じていました。逆に苦手だったのが国語で、読解問題は見事に外していました。そのため、当時、自分は絶対理系だ!と思っていました。高校時代のことで特に覚えているのは、高2の夏に行った3週間のイギリス短期留学です。海外で得た学びや体験は何にも代えがたい経験で、視野が広がりました。この頃、外国に行ってみたいという意識が自分の中に芽生えました。

選択肢の幅を求めて文学部を志望
両親が教師だったので、将来の夢は漠然とですが教師でした。進学先の候補の一つとして京大はありましたが、明確な目標になったのは高校2年生の時に行った京大のオープンキャンパスがきっかけでした。京大の教育学部の見学に行ったのですが、併せて見学した文学部の方に私は興味を抱きました。なんといっても、学びの範囲が「人類の営みに関して」。幅広過ぎですよね。その時に、教師以外の道も視野に入れ、幅広く学べて選択肢が広いところにいこうと思い、最終的に京大文学部に決めました。オープンキャンパスによって京大の雰囲気や学習内容を知ることができ、「京大で学びたい!」と強く思えるきっかけになったので、悩んでいる高校生の方はぜひオープンキャンパスに参加することをお勧めします。高3の夏頃から受験勉強にも本腰を入れましたが、周りの友達も上の大学を目指していたので、励まし合い、刺激し合いながら進めることができたと思います。受験生の時は、平日も土日も、学校や家、塾の自習室を使ってひたすら勉強ていました。憧れの京大に入りたいという目標があったので、受験勉強が嫌になるということはあまりありませんでした。合格した時は嬉しくてたまりませんでした。

バックパッカーとして40カ国を旅した大学時代
京大に入学後は、想像していたよりもっと自由な学生生活が待っていました。高校時代に芽生えた外国へ行きたいという気持ちは加速し、バックパッカーとして40カ国ほど一人旅をしました(今も休みを取ってよく旅行をします)。塾、飲食店、旅館などいろいろなアルバイトを経験してお金を貯めて、夏休みや春休みなどの長期休暇はいつも海外に行っていました。シベリア鉄道でウラジオストクからモスクワ横断、南米大陸を周遊したりと楽しみました。そのおかげで、ちょっとやそっとでは動じない度胸が身に付きました。海外とつながる仕事がしたいと思い、卒業後の就職先として商社を志望していましたが、4回生になり卒業論文の研究を始めた時に変化がありました。
幅広く学べると思って決めた文学部でいろいろ学んでいる内に、私は心理学に興味が湧きました。研究対象を乳幼児とする板倉昭二教授のもとで発達心理学を勉強していく内に、そこで初めて知ること、学ぶことがたくさんあり、新鮮さと面白さを感じました。そこで、もっと詳しく知りたい、明らかにしたいという気持ちが強くなり、大学院への進学を決めました。

サイエンスの研究をしながら社会貢献を目指す
大学院では、乳児期の社会的学習メカニズムの解明に取り組み、研究することの楽しさを知りました。研究成果を評価していただき、京大総長賞やたちばな賞を受賞したことも、自分がやってきた研究への自信につながりました。
大学院博士課程の時に将来の道を考えていたところ、NTT研究所という民間企業でも、私の研究を続けられる道があることを知りました。NTT研究所では基礎研究ができ、そこで得た成果を社会に出すための応用研究もできるという両方を兼ね備えていることが魅力的であったので、入所を決めました。
私は現在、乳幼児のコミュニケーション能力の発達過程を解明していく基礎研究を行っています。子どもが喋る様子をモニタリングしながら分析・解析し、これを育児や教育支援へとつなげる仕事です。一流の研究者を目指し、自分の研究を発展させることで社会に貢献していきたいと思っています。

上司・同僚からの一言

小林哲生さん(主幹研究員)

奥村さんは、赤ちゃんの言葉と心の発達に関する研究で卓越した成果を数多く創出し、現在、世界の研究者から注目されています。最近では、科学的エビデンスに基づいて、お子さんの興味と発達にぴったりの絵本を検索するシステムの開発を行い、育児・教育支援に貢献する商品やサービスの提案まで行っています。飽くなき科学的探究心と最後までやりきる粘り強さが奥村さんの最大の武器であり、会社でも頼もしい存在になりつつあります。

一流の研究者に!

文学部に入った頃は、自分が研究職の道に進むとは思ってもみませんでした。特に心理学の分野で、民間企業の研究所は国内でも希少だと思います。今は研究者として、乳幼児の語彙・文法学習の基礎研究を発展させ、言葉に遅れがある子への支援などにもつなげたいと思っています。そして、一流の研究者としてのキャリアアップを目指していきたいと考えています。

こうやって勉強してました

京大の問題は独特であり考えさせられる問題が多く、細かい知識というより応用が利く知識が必要だと思います。基礎から応用に繋げることができるように、応用問題をいくつも解きました。参考書や問題集はあれこれ手を出さず、先生に推薦され自分に合っていると思えるものを繰り返し解き、単語帳もこれだという1冊を決めてやりこみました。数学でわからない問題があった場合、ずっと考え込むというより、解答を 見て解き方を覚えるという方法をとっていました。間違えた問題は徹底的に復習し、わからないことを残していかないようにすることも重要だと思います。


受験生の時は、不安になったり辛くなったりすることが多いですよね。私から言えるのは、大事なのは心が折れないようにすることだと思います。私はリラックスする時間をとるなど、適度な息抜きを心掛けていました。友達や家族と遊んだり、読書をしたりと勉強以外の時間を有効に使って気分転換しながら、受験を乗り切ってください!