キャリアストーリーを知るOG社会人インタビュー

数学に苦労した私が今、
算数の教科書を作っています

木村 遥奈 KIMURA Haruna

総合人間学部 認知情報学系 卒業
大阪府立天王寺高等学校 出身
株式会社新興出版社啓林館

数学が苦手なのに高校で理数科に!?
中学の頃の好きな科目は国語。特に古文が好きで、『源氏物語』のあの雅やかな世界に憧れていました。それなのに高校で理数科(現在は文理学科)を選んだのは、「行くなら上を目指したい」と思ったからです。理系も比較的好きだったので、特進コースのつもりで入りました。でも、入学してから愕然としました。周りは東大や京大を目指す子ばかりで、同級生のレベルが高すぎて、もう授業についていくのに必死でした。数学が苦手だということに、入学してから気づいたのです。だから「みんな理数が得意なら私は国語を頑張ろう」と逆に奮起しました。
また、中学から始めたバリトンサックスが吹きたくて、吹奏楽部の活動に打ち込んだこともいい思い出です。とにかく楽しくて、毎日練習していました。勉強と部活との両立が出来る器用な子もいますが、私はそれが出来ないタイプです。勉強は学校の授業のみで完結し、成績はあまり気にせず、部活がある時は部活に集中していました。昔から一つのことに集中するタイプだったので、学校の定期テストも入試も、直前になってから集中して勉強していました。

私も京大でジャズをやりたい! それが私の目標
京大を意識したきっかけは、中学3年生の時に塾の先生から「京大は面白いし、京都は楽しい」と言われたからです。それに高校時代入っていた社会人と混合のジャズバンドにも京大のジャズサークル出身の方がいらして、大学の話を聞いてすごく面白く感じました。それと同時に「私も京大でジャズをやりたい!」と、強く思いました。楽器の面白さや、出会った人の影響は大きいと思います。
志望学部は、高校1年生の時に行った京大のオープンキャンパスで決めました。「人がどういうメカ二ズムでものを見ているのか」などを研究する視覚科学研究室の紹介文を読み、その研究内容にとても興味が湧きました。その研究室があるのが、総合人間学部でした。部活三昧の生活だったので、本格的に受験勉強を始めたのは高校3年生からです。学校の教育方針が授業重視だったので塾には通わず、夏期や冬期の講習だけ受講しました。受験勉強を始めるまで数学と物理は本当に苦手で、特に物理は春の校内模試でまさかの0点! 総合人間学部は理系入試でも文系科目の配点も多いため、得意だった国語と英語で何とか挽回を図ろうと思いました。

勉強もサークルも満喫した大学時代
大学生活がスタートしてからは、念願のジャズサークルに入りました。1人暮らしを始めたり、巫女さんという京都らしいアルバイトを体験したりと、京都での学生生活を大いに満喫しました。一方で、高校生の時に興味を持った視覚科学への探究心も満たすことができました。私の研究テーマは、文字に色がついて見える「共感覚」のメカニズム。“色とは何か”ということを探る研究に没頭しました。私にとって京大は、先生や先輩、友人、良い出会いがたくさんあった場所です。今の自分があるのは京大のおかげだと思っています。もし自分が高校時代に戻ったとしても、やはり京大を選ぶだろうと、そう思える場所です。
やがて迎えた就活では、「自分らしい働き方」を重視しました。いろいろと悩み模索していた時に、出会ったのが今の会社。条件的にも自分が思い描く将来像的にもマッチし、ここなら1年目から自分がやりたいと思っている企画業務が出来るんじゃないかと、希望を持ちました。視覚科学の研究をしていたので、ビジュアル面で人を惹きつける“教科書作り”という仕事内容にも魅力を感じました。

それまで積み重ねた経験が生きる職場・仕事へ
今は編集者として、小学校の算数の教科書を作っています。数学が苦手だった私が算数の教科書を作っている。不思議な感じがしますが、それは大学時代にした塾講師のアルバイトのおかげです。教えるために数学の予習復習をする中で、昔はあれほど解けなかった問題が理解できるようになりました。積み重ねた経験が強みとなり、今に繋がっています。これは色覚についても実感していることです。小学校の教科書はイラストも多いので、特定の色が見えにくい色覚特性をもつ子にも対応する必要があるからです。大学で学んだことが今、大いに生きています。
教科書作りはチームで行うのですが、その制作スパンは長く、3~4年かけて1冊を仕上げるなんて事は当たり前。とても根気のいる仕事です。私が担当した教科書は2020年に出るものなのですが、私にとって初めて制作した教科書です。子どもたちにとってわかりやすく、楽しく算数に触れられるようなイラストやデザインを考えることはとても面白かったし、やりがいを感じました。これからもさまざまな工夫を施した、多くの人に喜ばれる教科書を作りたいと思っています。

上司・同僚からの一言

藤原智志さん(株式会社 新興出版社啓林館 第一編集部 第一課 課長)

木村さんはベテランの先輩が相手でも、意見を言うべき場面できちんと提案が出来ます。行き詰まった時でも妥協せず、じっくり突き詰めて考える、非常に信頼のおける部下ですね。少々のことではめげない根性のある性格も素晴らしいなと思っています。

楽しい教科書を作りたい!

教科書や教材を作る会社で私は算数の教科書の編集を担当していますが、国語力も絶対的に求められます。そういう意味では、文系と理系のハイブリッドとも言える総合人間学部で学んだことは仕事に直結していると感じています。子どもたちにもっとわかりやすく、勉強が楽しいと感じてもらえるような教科書をこの先もたくさん作り続けたいなと思っています。そして子どもが生まれたとしても今の仕事を続けていくことができればいいと思っています。

こうやって勉強してました

勉強場所は、高校の自習室や行き帰りの電車の中、直前期だけ塾の自習室を使用していました。私は受験勉強のスタートが遅かったので、基礎ばかり勉強している内に入試を迎えました。高校の職員室に質問に行く回数は、私が一番多かったと思います。1つわからないところがあれば、理解できるまで何度も聞きに行くことを入試ギリギリまで続けていました。特に、苦手科目だった数学と物理化学には一番時間を割きました。得意科目だった国語(古文)でも、基本である文法や単語が分からないと問題が解けないので、自分で決めた文法問題集と単語帳それぞれ1冊を徹底的にやりこみました。基礎中の基礎を何度も復習していたことが、結果的によかったように思います。


京大に来たら、いろんな面白い出会いがあると思います。中には、自分の未来を変えるような出会いも待っているかもしれません。京都での学生生活はきっと、なにものにも代えがたい思い出や経験になると思います。受験勉強は大変ですが、無理なく、自分に合った勉強スタイルを見つけて頑張ってください。よかったら啓林館の教材も受験のお供にしてください!