MY STORYNo,23
GRADUATE
卒業生
Bando
Hina

坂東日菜
有人宇宙システム株式会社
理学部理学科 卒業、理学研究科修士課程 修了
岡山県立岡山操山高等学校 出身
交信先は、
高度400㎞の
宇宙に浮かぶ
ISS。
宇宙飛行士の
任務を見守る
影の立役者
晴れの日が多く、星がよく見える岡山県出身です。天文台の数も多く、幼少期から天文台はなじみある場所でした。小6のころ、国立天文台岡山天体物理観測所で京大理学部物理学専攻の教授の講演がありました。そこで聞いたブラックホールのお話はとてもおもしろくてワクワクするものでした。すると、講義後に先生が「テストで80点取れたら京大に入れるから、もっと知りたいなら京大においで」と。「80点なら私でも取れる!」となかば騙されたように京大に憧れはじめました(笑)。
学びも遊びも、宇宙づくめの大学生活
そうして入学した京大では、宇宙物理学を専攻するつもりでした。でも、授業を受けて関心をもったのは惑星の構造や起源、生命の起源を扱う惑星科学。手の届かない宇宙の理論を望遠鏡などを用いて探る宇宙物理学とは異なり、探査機を使って直接に地面を観測できることも魅力的でした。
天文同好会での活動や、地球外生命を考える自主ゼミなど、宇宙のことばかりを考えた大学生活のなかでも、いちばんのターニングポイントは「有人宇宙学」に出会ったこと。人類の宇宙進出を議論する学問で、理学部だけでなく、宇宙での食糧生産を考える農学や、ロケットや人工衛星を研究する航空宇宙工学など他学部の学生と交流できました。
とくに大きな経験は、アメリカのアリゾナ州での「有人宇宙実習」。惑星移住を想定した研究や訓練ができる施設「バイオスフィア2」を見学しました。熱帯雨林や砂漠、海などの地球の生態系を人工的に再現したドームです。調査実習をしつつ、惑星の大気・水の循環や、閉鎖環境での集団生活における精神状態の管理についての講義を受けました。「人間が宇宙に行く」ことが現実味を帯びてきて有人宇宙学への関心は一気に高まりました。

宇宙飛行士の安心・安全をささえる仕事
就活は宇宙業界に絞り、有人宇宙システム株式会社に就職。2年めのいまは運用管制官としてISS(国際宇宙ステーション)にいる宇宙飛行士の作業スケジュールを管理しています。宇宙飛行士に課せられた任務はとても多く、実験・研究の作業から、ISS内の清掃などの雑務までもがスケジュールに組み込まれます。宇宙飛行士とリアルタイムで連絡を取りあったり、他国の運用管制官とやりとりをしたり、ISSの状況を常時監視しながら、5分単位でスケジュールを進行します。不具合が発生するたびに、計画を変更・調整します。一瞬たりとも気のぬけない緊張感のある仕事ですが、ずっと好きだった宇宙に関われている喜びがなんといってもやりがいです。
老朽化したISSは、2030年に運用を終了する予定ですが、月面着陸をめざすアルテミス計画、さらには民間企業による宇宙ステーションの建設計画も活発に動きはじめています。いまよりもたくさんの人が宇宙にいるであろう未来、他国との調整や飛行士たちとのやりとりはより複雑になるはず。これまでに培った知見をいかしたいです。
夜空に浮かぶ月を眺めたとき、「この瞬間もあの遠い場所で、無人探査機が月面を走っているんだ」と想像するとグッときます。そんな私と同じように、宇宙の話を聞いている人たちはみんな、目が輝いていてワクワクしている。宇宙についての情報発信をとおして、笑顔をつくる仕事にも携わってみたいです。もちろん、いつかは宇宙にも行きたい。月のフィールドワークなんてできたらとても楽しそうです。

COLUMN

休日のすごし方
休日は職場の仲間とともに登山をしてリフレッシュしています。
ふだんの業務では直接関わりがない人とも山を通じて仲良くなっています。
夢は百名山制覇!
Recommend高校生のみなさんに手に取ってほしい作品

『発光』 吉原幸子 著(思潮社)
詩ってどうやって読めばいいんだろうと思っていたときもありましたが、はじめてすごく心を動かされる詩と出会い、一生をとおしてなんどでも読みたいと思ったのがこの本です。吉原さんはとくに女性のための詩を書かれていた方なので、ぜひいちど手にとってみては。
『山小屋の灯』 小林百合子 文、野川かさね 写真(山と渓谷社)
登山の目的はピークに立つことだけじゃない。山で出会うふとした風景とそこで出迎えてくれる小屋の方がたが描かれた一冊です。読んでいると私もその場に足を運んでみたくなります。