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子育て世代の生の声 ~みんなどうしてる?~

育児、介護をしながらの、日々の研究活動のシーンでは、いろいろな悩みが生じると思われます。
ここでは、男女共同参画推進センターが提供する情報、部局によるサポートなど、京都大学における現状と事例を共有します。是非みなさまのご意見をお寄せ下さい。

研究者の妊娠・出産・復帰その② いつから休む?

ニュースレター第100号掲載(2022年1月15日)

 前回より、研究者の妊娠・出産・復帰に関連して生じる悩みや課題を扱っています。2回目である今回は、産休・育休の取得を取り上げます。
 一般に、産休とは産前休暇および産後休暇を略したもの、育休とは育児休業を略したものとして使われており、本コラムでもそれに倣いたいと思います(注1)。
 産前休暇の取得は、本人の判断に委ねられており、出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から、請求すれば取得できます。これに対して、産後休暇は、強制休暇で、本人の意思にかかわらず、出産の翌日から8週間は就業することができません(ただし、産後6週間を経過後に本人が請求し、医師が認めた場合は就業することができます)。産前・産後休暇は、取得してもその間給与は従来通り支払われます(注2)。
 一方、育児休業は、一定年齢以下の乳児を養育する就労者が、男女を問わず、希望する期間子どもを養育するために休業することができるものです。本学においては、常勤教職員の場合には3歳に満たない子が対象となります。
 また、常勤教職員以外の場合には、原則として1歳に満たない子が対象となりますが、一定の事情があれば、1歳6ヶ月または2歳に達するまで取得できます。育児休業の間は、給与は支払われませんが、一定の要件を満たしている場合は雇用保険から「育児休業給付金」が育児休業中に支給されます(注3 )。
 出産予定日が決まれば、産前休暇が取得可能な時期が定まります。正式な申請は取得する直前にする場合であっても、研究・教育活動の関係者に見通しを与えるために、いつから取得するかを早めに決めて、伝えておくことが望ましいでしょう。自分が抜ければなりたたなくなる業務がある場合や担当が決まっている授業がある場合には、代理を探す時間を見込んでおかなければなりませんし、研究や発表のスケジュールも関係者の協力を得て見直すことが必要となってくることもあります。
 各種の研究費には、産休・育休の間は使用できなくなるものもあります(注4)。本学では、簡単に以下のような取扱いがされています。例えば、科研費については、研究中断届けを出していなくても、産休・育休中の科研費執行は認められず、科研費を用いた雇用もできません。ただし、研究代表者が産休・育休を取得する場合、産休・育休を取得しない別の者に研究代表者を変更すれば、当該科研費を用いた雇用を継続することができます(なお、科研費の申請自体は産休・育休中においても可能です)。その他の外部資金については、外部資金の提供元と研究代表者の了解のもとで、別の取扱いができることもあります。各部局に配分された運営費を財源とするものについては、各部局の判断に委ねられます。以上は、読者の皆さんにおおまかなイメージをお伝えするための概略です。各自の研究費の執行にかかる正確な取扱いについては、必ず各部局の会計担当者にご確認ください。
 以上のように、産休・育休中には研究費の執行ができなくなる場合があるため、本人の希望で、産前休暇の開始時期をできる限り遅らせる、あるいは取得しないというケースもあるようです。もっとも、妊娠の経過次第では、出産予定日を待たず、入院や早期の出産に至ることもあり、また、産後休暇は強制的に取得することになります。したがって、とりわけ、自分が研究代表者になっている資金で行われている共同研究については、休んでいる間の扱いにつき関係者と相談しておく必要があります。
 育児休業については、いつまで取得するのかについて悩まれる方も多いと思われます。これについては、次回取り上げたいと思います。

(文責 育児・介護支援事業WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)

注1)本文の記述は、特に注記がない限りは、常勤教職員の場合を前提にしています。各自の雇用形態にかかる京都大学の制度については、以下のウェブサイトをご確認いただくとともに、事務担当者に詳細をお尋ねください。
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/embed/jaaboutgender_equalitydocuments201908.pdf
また、産前休暇・産後休暇・育児休業にかかる法制度一般については、以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/ninshin/sanzen_sango.html https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/ninshin/ikuji.html

注2)本文の記述は、いずれも妊娠した女性について現行制度についてです。育児休業について法改正に基づく制度変更が予定されております。新制度および男性の育児休業や育児参加一般については、また回を改めて取り上げたいと思います。(改正育児・介護休業法については厚生労働省の「育児・介護休業法について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html 参照)
本学には、外部資金で雇用されている常勤研究者の産前・産後休暇の給与相当額を支援する制度がございます。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/support/research/expenses/ また、学術振興会の特別研究員は、出産または育児に伴い研究に専念することが困難な場合には、一定の場合、採用の中断及び延長を申請することができますが、中断期間中は研究奨励金も支払は停止します(ただし、研究再開準備期間中には半額が支給されます)。「日本学術振興会特別研究員 遵守事項および諸手続の手引き 令和3年度版」18頁参照。

注3)支給額は、支給対象期間(1ヶ月)当たり、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の67%(休業開始から6ヶ月後は50%)相当額となっています。

注4)育児休業等の取得に伴う科研費の交付申請の留保や中断については、科研費FAQの【Q5201】(令和3年10月版であれば、31頁以下)をご参照ください。https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/05_faq/data/kakenhi_2021faq.pdf