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子育て世代の生の声 ~みんなどうしてる?~

育児、介護をしながらの、日々の研究活動のシーンでは、いろいろな悩みが生じると思われます。
ここでは、男女共同参画推進センターが提供する情報、部局によるサポートなど、京都大学における現状と事例を共有します。是非みなさまのご意見をお寄せ下さい。

小1の壁 その② 実際の生活

ニュースレター第94号掲載(2021年1月15日)

小1の壁を乗り越えるのは、容易ではありませんが、仕事との両立に悩む保護者にとって、学童期の子どもを抱える生活を職場で関わる人々に理解してもらえることは大きな助けになります。
保育園の時期に比して、周囲の理解や支援のための制度整備はまだ十分とは言えません。また、小学校~学童クラブその他の放課後の活動~帰宅のスケジュールを、子どもの成長にあわせて調整していくのは簡単なことではなく、保育園時代と比べて保護者が使える時間は一時的には減少したという声も多く聞かれます。低学年の場合は安全上子どものみでの留守番は難しく、自分で戸締りがしっかりできるまで、帰宅を早めざるを得ない場合や、ファミリーサポートやシッターサービス、親族を併用しながらの綱渡りの毎日である場合もあります。年齢の違う兄弟姉妹がいると、保育園、学童クラブ、家の間の移動も必要となり、夫婦間の手分けや、ファミリーサポート等の動員もいっそう重要となります。このような場合、家族内での情報共有・マネジメント能力も求められます。

宿泊を伴う遠方や海外への出張は、配偶者に頼む、(場合によっては遠方の)親族に一時的に預かってもらう、あるいは学会先の託児所を利用しながら子連れで参加するなどの方法で乗り切る人が多いようです。学会の託児所は小学生未満限定となっていることも多いのですが、事情を説明し預かってもらったという体験談も耳にします。オンライン技術が普及した今日においては、学会その他の会合へのオンライン参加など、選択肢が増えたことは子育て研究者世帯にとっても歓迎すべきことです。他方で、オンサイトによる参加にはリモートでは代替できない部分も多々あり、子育て世帯がオンサイト参加できるような学会等の運営の努力も引き続き途切れさせないことが重要であると思われます。
小学生ともなると、成長には個人差や個性が出てきます。友達や学童クラブのスタッフとの関係も複雑になり、学童クラブに行きたがらなくなることもあり得ます。小学校や学童クラブでのトラブルなどは子どもが自分から話さないことも多いため、担任の先生や学童のスタッフからの電話などで事態を知ることもあり得ます。一時的に、時間をとって子どもと向き合うことも必要になるかもしれません。問題に早期に対応するためにも、小学校や学童クラブとのコミュニケーションを円滑にしておくことが大事です。懇談会等の行事は業務時間と重なることも多いですが、そのような機会を利用して、仕事や家庭の状況を担任の先生や学童クラブのスタッフ、他の保護者に伝えることで、配慮をしてもらえたり、他の保護者が「お互い様だから」と助けてくれたりすることもあります。
保育園の時と異なり、小学校には夏休み、冬休み、春休みのような長期休みがあります。子どもは楽しみにしていますが、保護者の負荷は増えます。学童クラブでは通常朝から預かってもらえますが、計画的に夏休みの宿題をさせ、自由研究等を見守り、長期休みらしい体験をさせるのは保護者の役割になります。日帰りもしくは2−3泊のキャンプや、自由研究をサポートしてくれるイベントなどを利用することも考えられます。夏休みに入る前に、家族でどのように過ごすか話し合うのもよいかもしれません。
3~4年生になると自立に向けて少しずつ自分でできることを増やしていくとよいでしょう。この年代になると学童クラブを利用しない世帯も増え、お世話になる場合にも自分で帰宅するなど利用時間が減ってくることが多いようです。しかし、これも個人差や環境の違いが大きく、「○○さんのところはもう一人で留守番できるらしいよ」と言われたところで、我が家では難しいという場合もありますので、家庭ごとの事情の違いにも配慮したいものです。
子どもと保護者の予定と合わせてマネジメントし、さらに自立期の子どものサポートには、様々なアプリ・ツールが役に立ちます(これについては、別の回にコラムで取り上げることを予定しています)。
このように、子どもの小学校入学と同時に、仕事にかけられる時間は一時的に減少し、保護者は働き方の再考を迫られます。大変さはいつまでも続くわけではありませんが、育児と仕事との両立においては、時間的な制約も含めた生活スタイルの変化について、職場の理解とサポートが不可欠です。この記事が、小1の壁にぶつかっている人にとって、またそのような人を理解し、サポートしたいと考える人にとって少しでも助けになれば幸いです。

(文責 育児・介護支援事業 WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)