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子育て世代の生の声 ~みんなどうしてる?~

育児、介護をしながらの、日々の研究活動のシーンでは、いろいろな悩みが生じると思われます。
ここでは、男女共同参画推進センターが提供する情報、部局によるサポートなど、京都大学における現状と事例を共有します。是非みなさまのご意見をお寄せ下さい。

研究集会の託児所開設 その② アジア・アフリカ地域研究科でのとりくみ

ニュースレター第83号(2019年3月15日)

 アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)では、2015 年に「子育てフィールドワーカー WG」をたちあげ、子育て・介護等を担う研究者や事務職員の支援をしています(脚注 1 )。その一環で、ASAFAS 関係者が学内で研究会などに出席する際の託児費用を助成しています。毎年、この支援のために部局内で 10万円程度の予算を確保しており、研究会に出席する院生や教員などの要望に合わせて、臨時の託児所を設置しています。
 こうした環境は、一朝一夕でできたわけではありません。アジア・アフリカの諸地域を対象とする地域研究者の集まりである ASAFAS では、フィールドワークは欠かせない研究活動です。しかし、子育てや介護を担いつつ海外のフィールドワークをするには多くの困難があり、人的・経済的資源の確保ができず、道半ばで諦めてしまうケースもありました。
 そこで、同じように地域研究を柱とする部局(当時の地域研究統合情報センターと東南アジア地域研究所)の研究者たちとのあいだで、女性地域研究者のためのより良い研究環境をめざすプロジェクトがたちあがったのが、2012年です(脚注 2 )。院生や若手研究者も積極的に参加し、その中で困難や課題が広く共有されていきました。このプロジェクトでは「会場の後方にマットを敷いて、子どもを遊ばせながらの研究会をしたこともありました」。プロジェクトメンバーの一人であった平野 美佐先生は、後に ASAFAS の子育てフィールドワーカーWG の初代リーダー にもなっています。
 子育てフィールドワーカー WG 発足当時( 2015-2016 年)の研究科長であった小杉 泰先生に話を聴いてみました。「当時のことですが、そもそもそれ以前から ASAFAS の院生の男女比が均衡してきていて、男女共同参画に進まないと修了生の未来が危ういという意識は、先生方の間でそれなりに下地はあったと思います」。本部で男女共同参画推進が本格化し、ASAFAS 内でも女性の先生方が入り始めていたということもあり、部局内で議論を提起しました。先生の決断には、学会の男女比の影響も大きかったようです。「私が若いときは、女性研究者と言えば、片倉もとこ先生とか、伝説的なパイオニアが主でしたが、2003 年に中東学会の会長になったとき、30代以下は男女ほぼ半々という状態で、男女平等を進めないと次の世代の将来が危ういと真剣に思い、学会の中でも機会があれば主張を押し出すようにしてきました」。
 議論を進めるにあたって反対がなかったのかと聞くと、平野先生も小杉先生も、「特に先生方からの反対があった記憶はない」とのこと。もちろん、ASAFAS では当時から今に至るまで部屋不足が深刻な問題であり、色々な考えはあっただろうと思います。それでも、部局内での議論は比較的スムーズに進んだといいます。WG の名前でもある「子育てフィールドワーカー」という考え方を押し出し、WG の活動を進めるにあたっては、育児経験のある男性教員たちの存在がとても大きかったと聞きます。
 2016年には子連れ通学/出勤をしたときに授乳をしたり、子どもを遊ばせたりする「子育て交流室」が開設しました。子育て交流室を託児室として使うこともありますが、それ以外の部屋でも託児所設置ができるよう、市販の床マットを常備しています。稲盛財団記念館では、他部局の理解と協力を得ながら、車いす対応トイレ内にオムツ替え用の簡易ベッドが設置されました。
 周囲からの理解と、ちょっとした工夫で、いろいろできることがあるのではないでしょうか。とりくみの輪がひろがっていくことを願って、育児・介護支援 WG では今後も引き続き、情報共有をしてまいります。

(文責 育児・介護支援事業WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)

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