MY STORYNo,11

GRADUATE

卒業生

Fujimoto
Yuzuki

藤本結月
独立行政法人 国際協力機構(JICA)
京都大学法学部 卒業
兵庫県 加古川東高等学校 出身

INTERVIEW

この目がとらえた
社会の現状。
だれも排除されない
世界をめざして、
世界を駆ける

幼少期から、社会の〈当たり前〉から外れた方々の存在を強く意識していました。そうした人たちは、出自や国籍などを理由に公的なサービスを利用できなかったり、不平等な扱いを受けることがあります。私が法学部を選んだのは、こうした社会のルールはどのようにできているのかという前提を知りたかったからです。

モンゴルとフランスでのかけがえのない経験

大学時代は、一つの物事を追究するより、短期的な目標を立てて、あらゆることに挑戦するタイプでした。なかでも、大きな経験がモンゴルへの渡航。最初は、遊牧民への憧れという些細な理由からでしたが、数回訪ねるうちに、彼らの暮らしのなかに政治などに翻弄されてきた影響を感じとるようになりました。もっと深く知りたくて、2回生のころに渡航支援制度「おもろチャレンジ」に応募。モンゴル国と内モンゴル自治区で聞き取り調査をした約2か月は、自分自身がもつ認識や、調査相手と向き合う姿勢などにも深く向きあったかけがえのない時間でした。
もう一つの忘れられない経験は、フランスのパリ政治学院への交換留学です。講義も刺激的でしたが、私を変えたのは放課後の課外活動。支援物資を届けるために難民キャンプを訪ねました。衛生・治安面の荒れた環境への驚きとともに、テントで暮らす方からの言葉が忘れられません。「私たちの存在を伝えて。私たちは忘れられた存在だけど、あなたは力があるから」。自分の力を、現状を変えることにつかえないかと志しはじめた強烈な出来ごとでした。

「おもろチャレンジ」ではモンゴルの友人の協力で、友人の親戚の遊牧民宅に滞在した。捕まえたヤギを触る遊牧民宅の子どもたち。モンゴルで遊牧民とともにすごして感じたのは、その土地で暮らす人たちが感じる幸せや価値観を大切にしたいということ。これはいまの仕事をするうえでも指針になっています。思い悩んだときにふと思い浮かべる「ホーム」のような場所に、モンゴルで出会えたと思っています

挑戦してこそ見られる新たな景色

そうした経験をへて、就職活動では公益に資する仕事ができる公的な団体を志望しました。なかでも、理念や活動内容だけでなく、職員の方々の雰囲気に波長が合うと感じたのがJICAでした。
JICAの業務内容は、一つの地域に軸を置いて開発協力のあり方を考えたり、地球全体の経済や環境などの課題別に協力方針を考えたりと、多岐にわたります。私は今年度から平和構築部に所属し、「紛争を起こさない社会づくり」をめざす協力を、現地の方とともに考えています。まだまだ勉強中の身。さらに経験を積んで、自分なりの視点や経験が媒介となり、課題解決に資する仕組みづくりに貢献できるようになりたいです。
出張や研修でこれまでに、パキスタンや南スーダン、エチオピアなどに渡航しました。新しい場所に飛び込むことへの抵抗感はありません。思えば、幼少期の自分は、周囲の当たり前になじめず、浮いていると感じていました。だけど、高校、大学と世界が広がるにつれて、価値観が多様になってゆくことが嬉しかった。新しい世界で得られるものの大きさを知っているから、挑戦は苦でないのです。
突拍子もない行動をおもしろがってくれる京大の雰囲気のおかげで、たくさんの得がたい経験ができました。「自分って変かな?なんか周りと違うかも」と感じている人こそ、輝ける場所が京都大学です。


モンゴル出張時にJICA業務の一環である「ビジネスアイデアサポート」のために遊牧民宅を訪ね、遊牧民が実際にどういった生活をしているかを調査
左/研修で訪れたパキスタン南部の村。2022年の洪水被害による厳しい現実に衝撃を受けました。写真手前は客人用に敷かれた手工芸品。その奥からこちらを見つめる村の子どもたちが印象的でした
右/南スーダン出張時、安全管理上、出歩くことが困難でしたが、出発日に現地の方の協力で近くの山に行き、撮影した朝焼け

COLUMN

休日のすごし方

さまざまな人や情報にふれる仕事なので、休日は読書をしたり、意識的に自分の想いや軸を大切にする時間をつくっています。NPO団体の活動等の業務外の活動が仕事にも還元できることもあります。

Recommend高校生のみなさんに手に取ってほしい作品

『ビジネス・ゲーム ─ 誰も教えてくれなかった女性の働き方』ベティ・L・ハラガン 著、福沢恵子・水野谷悦子 共訳(光文社)

とくに本誌を読む女性学生に一度触れてみていただきたいと思う一冊です。キャリア面でとくに女性が面しやすい課題を戦略的に分析する書きぶりが印象的で、「男性中心のビジネス社会で女性はルールを知らずに働いている」という表現が刺さります。現在の社会設計を新たな視点で客観的に捉えるための参考書的存在です。

『みえるとか みえないとか』ヨシタケシンスケ 作 伊藤亜紗 相談(アリス館)

こども向け絵本ですが、「多様性」に迷ったときには毎度立ち返る一冊です。作者ヨシタケシンスケさんの作品は哲学的な問いを根源に感じるものが多く、その中でもとくに大切にしたい感覚を思い出させてくれます。