京都大学男女共同参画推進センター / Kyoto University Gender Equality Promotion Center

コラム

みんなどうしてる?


育児、介護をしながらの、日々の研究活動のシーンでは、いろいろなお悩みが生じると思われます。
ここでは、男女共同参画推進センターが提供する情報、部局によるサポートなど、京都大学における現状と事例を共有します。

特集記事

ニュースレター第97号掲載(2021年7月15日)

家庭内から始める男女共同参画
その② わが家のベストな分担の模索

 男女共同参画の実現には、パートナーと同居しているのであれば,育児・家事の負担がどちらかに偏らないよう、協力し合うことが不可欠です。
 送迎や炊事とは異なり、日々の細々とした、しかし不可欠な用事の負担の偏りは気付かれにくいものです。こうした「名もなき家事」の代表例は、トイレットペーパーの補充などですが(注1 )、子育て世帯では、保育園や学校に提出する書類の準備、子どもが小さいうちは、友だちとの予定の日程調整、日々の持ち物や宿題の確認なども含まれます。このような用事は、蓄積すれば、結果として多くの時間が割かれます。家族みんなで書き出してみれば、負担の偏りを共有するきっかけになったり、小さな心がけで減らせる家事がみつかったりするかもしれません。
 大学の研究者の大半が男性で構成され、子どもをもっても、家事・育児を家族に任せ、昼夜を問わず研究その他の業務に没頭できた時代は過去のものとなりつつあります。少し以前は、わが国では、父親は外で就労して外貨を稼ぐかわりに家庭内外で自由に使える時間を持ち、家事・育児は母親が負担・責任とも負うことが当たり前であるかのように語られることが多くありました(注2 )。男性の家事・育児への参画が進んだ現在でも、そのような家族像を前提とした生活習慣や制度が残り、負担は女性に偏る傾向があります(注3 )。他方で、長時間労働を是とする業務のあり方が改善されない職場環境で、家事・育児を担う男性の苦境が気付かれないままであることもあります。
 さらに、有職者と学生のカップルであれば学生に、スケジュールの管理が厳しい職種と裁量の多い職種では後者に、収入の違いがあれば少ないほうに負担が偏りがちであるようです。当事者たちが話し合い、合理的な役割分担として望んだ結果であればよいですが、一方が他方の時間や家庭内労働の価値を「安く」見積もった(注4 )結果、家事・育児分担の偏りが生まれている場合には、長期的なキャリアプランをふまえ、負担のバランスを見直すことも選択肢かもしれません。もっとも、家庭ごとに事情はさまざまであり、第三者から「もっと家族の協力を得る努力を」と言われても難しい場合もあることも、指導教員や管理職は心得ておく必要があるでしょう。
 研究活動には、必要となる時間やタイミングを事前に確定することが難しい作業も多く、また、特定の作業に従事しない思索の時間も創造的な活動には不可欠です。子育てをしながら研究活動に従事する研究者が、ジェンダーや社会的な立場を問わず、日々の生活において自由に研究に使える時間を持てるよう、家族や職場、社会の理解が進むこと、同時に、育児中の同僚がいるために他の構成員の負担が不当に重くなることがないような職場環境の整備が進むことを切に願っています。

(文責 育児・介護支援事業 WG 専用アドレス:ikwg@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp)

注1 「名もなき家事」で検索すると、さまざまな例が各所で紹介されています。忙しくても担当できる家事は、朝のゴミ出しだけではありません。「『名前のない家事』って、知っていますか?」男女共同参画通信vol.47(京都市、2019 )参照。https://www.wings-kyoto.jp//publish/.assets/Vol47.pdf
注2 もっとも、大正時代まで、わが国においては、男性が育児を当然のように担っていたことについて、2020 年度全学共通科目ジェンダー論の落合恵美子教授の授業動画をご参照ください。
https://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/activity/ilas_seminar/online_m2-2/
注3 これは、男性側の要因によるとは限りません。女性が、自分がやったほうが早くすむ、家事が不得手であれば女性と しての能力が低いと考えている、やり方の違いを受け入れられないなどの事情があることによる場合もあります(前 掲(注1 )の文献参照)。
注4 家庭内での家事や育児は対価が支払われない「アンペイド・ワーク」の代表といわれます。家庭内のケア労働は社会 の再生産に不可欠の領域でありながら、その価値が経済的にも社会的にも正当に認められてきませんでした。総論的 な概説書として、川崎賢子・中村陽一(編)『アンペイド・ワークとは何か』(藤原書店、2000 )を参照。