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イクメンたちのワークライフバランス

妻が夢を実現するために
育児も家事も
できるかぎり協力

別所 裕介

白眉センター 特定准教授 専門領域 文化人類学

長年にわたって、ヒマラヤ・チベット圏で現地調査
文化人類学の視点から
現代中国にアプローチ

1980年代に経済開放をした中国はエネルギッシュな経済社会。その迫力に圧倒されて中国を研究しようと思ったのがこの道への発端です。ですが、漢民族を正面から研究するのではなく、大規模な開発が進む国境地帯では何が起こっているのか。宗教や文化の違う辺境の民族がどのように中華的なものを受け止めているのか。その暮らしぶりから中国の姿が見えてくるのではないかと考え、「観光開発」や「環境問題」をキーワードに、チベット高原やネパールを中心とするヒマラヤ・チベット圏の民族と国家をめぐる問題を研究しています。
近年、近隣諸国にますます存在感を高める中国ですが、現代中国をその外縁から文化人類学的に考察することで、日本と中国との間に抱える「歴史認識」や「領土問題」およびアジア諸国との関係性を包括的にとらえる研究視角を構築したいと考えています。

チベット女性と国際結婚
育児は近代的な日本のスタイルで

これまで20年以上、チベットを中心に現地調査を続けてきました。妻は現地で日本語を勉強していたチベット人。前に来日し、広島大学の大学院で修士課程を修了後に私と結婚。その後介護施設で働いていましたが、出産のため退職。今は翻訳関係のアルバイトをしていますので、子どもは京大内の保育所に入所しています。
チベットは未だに男性中心の社会。育児・家事は女性の役割ですが、高等教育を受けてきた妻は、近代的な日本の子育てに順応しています。チベットのおむつは一枚の布を何回も洗って使い回すものですが、使い捨ての日本の紙おむつは便利と愛用しています。京大の宇治宿舎から保育所への送迎は、わたしの役割です。国際結婚の課題があるといえば、言語でしょう。子どもが日本国籍であってもチベットのアイデンティティーを残したいという妻の方針から、自宅ではチベット語しか話していません。信仰の篤いチベット人が仏教を理解するためには、チベット語は必要ですからね。言語学者に聞くと、保育所や学校へ通うころから、家で使う言葉と外で使う言葉を親が意識的に使い分けることで、子どもも自然に使い分けができるようになるそうです。夏と冬の長期休暇にはチベットに帰るので、そのときにチベットの環境になじんでほしいと思っています。

三つ子の魂百まで 大切な育児は夫婦で一緒に

子どもが生まれてから、時間の使い方がうまくなりました。10時から6時まで保育所に預けている間に研究し、残業があってもそこで研究は一区切り。時間のメリハリがつき、ワークライフバランスのとれた生活に満足しています。妻の夢は看護師です。今はアルバイトと並行し、看護学校入学を目指して受験勉強中ですから、お風呂やおむつ替え、家事など、可能なかぎり手伝い、勉強のできる環境を作るようにしています。
チベットにも「三つ子の魂百まで」と似たような言葉があります。3歳までの育成環境はその後の人生を大きく左右しますから、なるべく良い体験をさせてあげたいと思っています。
わたしたち夫婦のように、身近に家族がいなくて支えがないとか、待機児童になってしまうという状況で、育児を奥さんに任せきりにしてしまっては、バランスが崩れると思います。どんな事情や環境でも、子どものために夫婦が手を取り合うことが大切ですね。
「子どもは自分の写し鏡」。しかめ面をすると子どもも不安に思うでしょうから、笑顔を絶やさないようにしています。外見的な行動パターンは大きく変わりました。そんな心の持ちようも、子どもが生まれて気づかされた点ですね。

ikumen 学内および公的制度やサービスの活用

子どもは生後1年を過ぎたところ。宇治市の保育所の4月入所申し込みましたが、入れなかったので、待機児童保育所でお世話になっています。ですが、利用できる期間は15カ月になる月の前月まで。ここで預かっていただけるのは後3カ月だけとなりました。昨年末に宇治市の保育所に入所申請をしましたので、今はその結果を待っている状態です。