京都大学男女共同参画推進センター / Kyoto University Gender Equality Promotion Center

コラム

日々感動。日々熱中。その積み重ねでドラマを書く。

脚本家

今井 雅子(いまい・まさこ)

大阪府堺市出身。1970年2月9日生まれ。
大阪府立三国丘高等学校卒、京都大学教育学部卒。大学在学中は京都大学応援団チアリーダー部に所属。
卒業後は広告代理店マッキャンエリクソンにてコピーライターとして勤務し、会社勤めのかたわら脚本家修行を開始。入社12年目の夏に退職しフリーの脚本家へ。映画『子ぎつねヘレン』、NHK朝の連続ドラマ『てっぱん』、Eテレ『おじゃる丸』などの脚本執筆のみならず、童話、作詞など多方面で独自の切り口を活かした執筆活動を展開中。

ことばの力で200万円を稼ぎ出す!?ものの見方、を磨いた大学時代。

「公募ガイド」ってご存知ですか?
エッセーやシナリオ、川柳などのコンテスト情報が網羅された雑誌なのですが、大学生のわたしはこの公募ガイドが主戦場でした(笑)。
なにしろ仕送りが少なくて、賞金や賞品のテレホンカードは大事な生活の糧。ハガキ1枚の標語から始まり、徐々にエッセーや論文などの大物を狙うようになり……。
在学中に稼いだ額はざっと200万円ほどです。
「交通事故多発のため涙が不足しております。涙の節約にご協力ください」。
これは学生時代、交通事故撲滅キャンペーンの標語で大賞を受賞した作品です。
視点をちょっと変えると、ものの見え方は一瞬で変わる――。
毎日ペンを走らせていた公募生活が教えてくれました。
卒業後は広告代理店でコピーライターとして12年ほど働きましたが、いま振り返っても、学生時代のこの標語はわたしの書いたコピーの中で一番いい、と思います(笑)。

子どものころの空想と異文化体験が「感動体質」をつくった。

仕事は楽しかったですが、いつからか、広告主でなく世間に向けて自分の作品を作りたいと感じるようになりました。
そこで再び公募ガイドを開き、脚本のコンテストに次々と応募。会社で働きながら脚本家としてデビューすることになりました。
表現を、したい――。そのルーツは、ぜんそくで体が弱かった子ども時代にさかのぼります。
学校に行けず家で寝ている間、たくさんの本を読み、物語の続きを勝手に考えていた日々……。「お話を作るのって面白い!」。
やがて母に連れられて芝居を見るようになり、歌舞伎、文楽、パントマイム、ウィーン少年合唱団と、本物の芸術にふれてたくさんの“インプット”をさせてもらいました。
そのころ隣に住んでいたインドの研究者一家は、わたしにとって最初の「異文化」でした。
お裾分けでもっていったお好み焼きにカレーをかけて食べてる! 庭石でチャパティを焼いてる! 驚きの連続でした。
中学生になると、母が渡航費用をやりくりして、わたしと妹を東ドイツ(当時)に連れて行ってくれたこともありました。
初めて見る社会主義の国は、日本にはない緊張感がありましたが、人とは打ち解けられ、今も交流を続けているペンフレンドもできました。
本や体験で得たことが、写真に撮るように切り取られ、ネタとしてストックされているわたし。日々感激し、驚いてきた積み重ねが、「今」につながっていることを感じます。

「タダではおきまへん」精神で朝ドラもPTA新聞も書く!

「今井さんってほんと、仕事を選ばないよね」。いろんな方にお褒め(!?)いただきます。
朝ドラも書くし、映画も書くし、語学番組の中で使うスキット(寸劇)も。歌詞も、朗読劇も、娘の学校のPTA新聞も、オファーをいただけば何でも書いちゃいます(笑)。
どんな仕事にも発見や感動があって、その経験は必ずどこかで何かにつながります。
実はいまマンションの管理組合の理事長をやっているのですが、その立場をちゃっかり活かして、管理組合の理事長が厄介事に巻込まれるドラマの取材をさせてもらいました。
「タダではおきまへん」という精神は、ふるさとである大阪・堺市のDNAでしょうか。
堺市の親善大使を仰せつかってからは、堺という大きなくくりで、これまでまったく接点のなかった方々ともつながる喜びが!
出会いは財産。わたしの引き出しは増えるばかりです。

子育てはハンデでなくキャリア。受援力を磨くチャンスでもある。

脚本家として独立した矢先に、妊娠がわかりました。
ちょうどドラマの仕事が次々と舞い込んでいたときです。
かつていた広告代理店の制作現場は、深夜残業もいとわずという環境。妊娠は周囲に迷惑をかけること、出産は贅沢なことという意識があり、なかなか言い出せませんでした。
妊娠7カ月を過ぎ、勇気を出して報告。
すると、プロデューサーも監督も全員が「知ってたよ、おめでとう!」「幅が広がるね」「もっと書きたいものが出てくるよ」ともろ手をあげてお祝いムードでした。
脚本家にとって子どもをもつことはプラスでしかないよ、と言われてビックリ!
でも、よく考えると、どんな仕事でも、子どもから得られる発想やパワーは計り知れないと思うのです。
女性であれ、男性であれ、子育ては一人の力ではできません。保育園、親族、ママ友、仕事を代わってくれる同僚……。
周囲に頼りながら生きると、助けてといえる力=「受援力」が磨かれていきます。
そして同時に、自分のできることを差し出す気持ちも育ちます。
助けてくれてありがとう、今度はわたしがやるね――。
子どもが小学生になったいま、周囲の人たちと自然に「お互いさま」の関係ができてきたのは、子育てをしたおかげですね。

メッセージ

自分をどんどん広げて“世間を狭く”しましょう。

よく「世間は狭い」といいます。これは言い方を変えれば、自分が広がっているということです。
自分の世界が広がると、人や情報はどんどんつながっていきます。「あの人とこの人がここでつながった!」とか「あのときのあの情報がいまつながった!」とか……。すると、思わぬ引き寄せにあうことが増えてきます。どんな人生においても、自分を活かすチャンスに恵まれることは大切です。そのチャンスを引き寄せるには、自分が広がるしかありません。いろん な人と会って、たくさんの本を読んで、いろんな驚きや感動に出会って、“世間を狭く”してくださいね!